ワインって同じ容量なのに、安いのは500円なのに、一番高いのだと100万円を超える事もある、不思議な飲み物ですよね?
でも、そこまでお値段が違うのって、ただブランド化してるだけなの?それともちゃんと理由はあるの?なんて疑問があると思います。
ブランド化の部分ももちろんありますが、それ以外にも高級ワインが高くなる「ワイン造りでの違い」があるのを、解説していきます!
・価格が安くなる要素、高くなる要素
・畑仕事でお金がかかる所
・醸造でお金がかかる所
・熟成でお金がかかる所
・流通でお金がかかる所
・その他の要因(ブランド化など)
こんな流れで解説しますので、なんで高いワインと安いワインがあるのかが、理解できるかと思います!
ワインが高くなる要素と安くなる要素
ワインのお値段はわからないと、とっても不思議なぐらい差がありますよね?
あまりにも高いのを見ると、「金持ち用のブランドでしょ?」みたいな穿った見方をしてしまったりしますが、ちゃんと高いのは理由があるんです。
もちろん、一定以上に高い物はブランディングで高くなっている部分は正直有ります。
100万円のワインは確実にそうですが、10,000円のワインも普通に考えれば高級ですよね?これにはちゃんと訳があるのです。
ワインが出来上がるまでを細かく見ていくと、そのお値段の謎が解けていきます!だから
畑 ~ ワイン醸造 ~ 熟成 ~ 瓶詰 ~ 流通
で高くなる要素を順に解説していきます!これが分かると高いワインが安いワインより美味しい理由もわかりますよ!
畑仕事で出るお値段の差
畑で起こる事が、ワインのお値段においては、かなり大きな割合で影響しています!
ワインは当然ブドウから造るのですが、ブドウは果物です。美味しい果物から造った飲み物の方が美味しいとは思いませんか?
美味しい果物を造るためにはやらなくてはならない事が沢山有ります!
ブドウの樹は日本で見るタイプと違って、ワイン用は大体上の写真の様に、たくさんの樹を並べる垣根仕立と言うのが主流です。日本が良く見るタイプが、どちらかと言えば特殊です。
収穫量の差
ブドウの樹はほっておくと、ブドウの房を10~20房ぐらい付けます。
1本のブドウの樹が根っこから養分を吸って、光合成をして造り出す糖分とか、その他のアロマの元となる要素は、何房あろうと同じぐらいしか造りません。
例えば1本の樹がブドウの実が必要な要素を「100」作るとします。それを20房で分け合うと、1つのブドウの房には「5」づつ分けられますよね?
次に、途中でブドウの房を切り落として、5房だけ残したとします。そうすると100ある要素から「20」づつもらうことが出来ます。
他の果物でもそうですが、美味しい果物を作る為には、ある程度果実数を減らす作業が必要なんです。
安ワインの場合は、「量が欲しい」のでこの時に房数をあまり減らさず、それこそなってる葡萄全部取るぜ!ぐらいのスタイルブドウ栽培をします。
一方、高級ワインは5房にしますし、2房ぐらいしか残さない事もあります!ですから、同じ面積の畑でも、取れる葡萄の数は1/5~1/10ぐらいしか取れないんです。
当然ですが、生産量もそのまま1/5~1/10になりますので、ワインの値段に跳ね返ってくる事が容易に想像できると思います。
機械化できるかどうか
次の点は、ブドウ栽培において、人がやるのか機械がやるのかの差も大きな点です。
まずは畑の環境ですが、ブドウの樹が綺麗に整列した垣根ですと、機械化する事が出来ます。なんとなくわかりますよね。まっすぐなら機械を置いて走らせやすいのが。
でも美味しいブドウが出来る環境って、まっすぐに垣根を並べられるところが少ないんです。
水捌けがいい台地。が美味しいブドウを作る条件です。これはある程度の水分ストレスがないと果実を美味しくしないブドウの性質と、成熟期に吸う水が多すぎると果汁が薄まっちゃうからなのですが、その辺はこちらの記事でご確認ください。
水捌けがいい条件で当てはまりやすいのが、斜面です。斜面は降った雨が下に落ちていくので、平坦な所よりずっと水はけがよくなります。
しかし、斜面って機械的には角度があり過ぎると、入れなくなるんですよね。そうすると人がやらなくてはいけなくなるので、人件費がかかります。
他にも機械の場合は、一律に同じ作業をするわけですが、ブドウの樹は当たり前ですが、すべての樹が同じ状態ではありません。本当ならオートクチュールな剪定や誘引、除葉をした方がいいに決まってるんです。
機械ですと、すべての樹に対して一律同じ作業をする事になるので、それなりにちゃんとしますが、オートクチュールで作業した場合よりかは全体の質が下がります。
オートクチュールな作業は人の手でしか出来ないので、そうなると人件費がかかります!
高級ワインはオートクチュールな作業をする為に人件費をかけているわけです。
農薬と科学肥料
次に問題になるのは農薬と化学肥料ですね。農薬は便利です。化学肥料も便利です。そして科学的な物の方が大量生産しているだけでなくて、調合だけで出来るので安価です。
ガンガン撒けば、病気も発生しないし、栄養も供給できているので、簡単にいい感じのブドウが造れます。
農薬に関しては、農薬漬けのブドウから造ったワインが正直嫌ですよね?農薬が大地にしみこむわけですから、土壌のバランスも崩れます。土の微生物もいなくなっちゃうんです。
微生物がいない、化学肥料だけで栄養を与えたブドウは栄養素が化学肥料で与えた決まった物になるので、ワインに欲しい、微妙な香り成分とかが造られなかったりします。
土造りをしっかりして、土の中の微生物がしっかりと生きている環境と言うのは減農薬ですし、有機肥料になります。
減農薬と言っても無しでは無理なので、自然の物で作った、天然農薬などは巻きます(それこそハーブのをすりつぶしたり)。そう言った物は化学製品より高くつきますし、化学製品ほどききません!
効かないので、これまた人が個々に対処する事になります。そうするとまた・・・人件費がかかります。
土地代
畑なので、当然土地が必要ですよね?
この土地のお値段は「取得費用」として、当然ワインの価格に乗ってきます。ヨーロッパの伝統的な産地は、歴史的に価値が高い事もあり、当然畑であろうと、お値段が高くなります。
最近最も高いのは、ブルゴーニュの畑なのですが、最上のグランクリュ畑になると、坪単価が銀座と変わらない!と言われるほどに高騰しています。
銀座の一等地でブドウ作ってたら、高級になるのは・・・まぁしょうがないですねよね。
さすがにブルゴーニュは極端な例ですが、ブランド化によって高騰してる部分は大いにあるので、ワインの値段にブランドがあるのも確かな要素です。
畑仕事のまとめ
ここまでをまとめると
・収穫量の差
・人件費
→機械化と、農薬や化学肥料の使用による違い
・土地代(ブランド代)
辺りで、お値段に差が出るのが分かると思います。
土地代以外は、お金をかけた方が量は減るけど、質のいいブドウが収穫出来る事も分かったかと思います。一番大きな要素はここです。
醸造で出るお金の差
次は、ブドウを収穫してワイナリーでワインを造る時の差です。
ワインを造る機材
ワイン造りで一番お金がかかるのは、圧倒的にワイン造りに使う機材です。使う機材がどんな物を工程順に考えてみましょう。
・除梗破砕
ここでは除梗機と破砕機が必要ですね。セットになってるマシーンも結構あります。それから除梗して選果するパターンだと、いまはバイブレーション台が有名です。頑張って1粒1粒確認してもいいですが、バイブレーション台の方が、素早く、且つ正確に出来るので、導入するワイナリーが増えています。
でも導入するとお金かかるんですよねぇ。
ちなみに安ワインの現場ではそもそも「選果」と言う作業をしません!ブドウがちょっと腐っていようが、傷ついていようがガンガンワインにしちゃいますから、安いワインが質が落ちる要素にもなります。
・圧搾
こんな感じの機械で圧搾する事が多いのですが、大小有りますが、いずれにしても高級車買えるぐらいの値段がします。
なんせ年に1回しか使いませんからね。あまり大型のを買うと元が取れないですが、小さいと沢山収穫した時に間に合いませんし。この辺はどうやってお金をかけるかです。
白ワインが多い場合はなるべく早く圧搾したいとか、都合もありますので。
・発酵タンク
発酵のタンクにはステンレス、コンクリート、樽があるわけですが、高性能な物は機能が多いです!
例えば、温度管理に関しても1度単位なのか0.5度なのか。温度変化させる時のコントロールはどうなのか?
パドルが付いてて、ワインを掻き混ぜてくれたり、機能が多いと当然高いです!
高級ワインな程、色々やりたいですからね。高い機能の物を買うのか、高い人件費を人がやるのか。と言う事でお金がかかります。
安いワインはほっとけばいいわけです。
最近ですとコンクリートタンクの卵型が流行っています!これはオーダーメイドみたいな造りなので、とりあえずお値段が高いですが、中で自然の対流が起こりやすいので、ワインに柔らかさが出ると言われています。
高級ワインが求める要素ですが、導入費用の問題で安ワインには使えません。
熟成をどうするか
熟成に関してはお金がかかる部分が「熟成する容器」と「熟成する期間」の2つの問題になります。
先に期間ですが、収穫して3カ月後に瓶詰して売る場合と、2年後に瓶詰して売る場合を考えればわかると思いますが、差が21カ月有ります。
収穫したブドウがお金に変わるまでの期間が3カ月なのと24カ月なのではキャッシュフローの面でも全然違うのが分かると思います。
それから置いておくと言う事は倉庫代の問題も有ります。また、保存するものがワインなので、倉庫にエアコンも必要です!
高級ワインの方が熟成期間が長いので、この倉庫代問題でも値段が上がります。
次に容器です。
容器は大別すればタンクと樽になるわけですが、樽って高いんです!ボルドーで使うような小樽の場合、安くても4万円ぐらいで高いと20万ぐらいします。
これは使う材料の質による影響が大きいです。オーク樫と言う樹で造りますが、これも「この森のオークがいい!」とかブランドがあります。実際森によって風味とか違うらしいので、高級な森の物は高いです!
高級ワインにはこの高い樽を沢山使うので、その分がお値段にも載ってきます。
ちなみに安ワインはタンクに安価なオークチップを投入して、樽の香りを付けたりするので、安上がりです。その代わり、樽の様に上品な酸化熟成がないので、妙にフルーティーだけど樽香が付いてたりします。
流通面では?
最後は瓶に詰めて流通されるわけですが、高級ワインの場合ここでも高くなる要素があります。
まず大体の場合、ボトル自体が重いですよね?重い瓶って言うのは瓶のお値段がそもそも高くなります。当然価格にはその瓶代がかかります。
さらには栓をするコルクも高級品は長いです!長いコルクは当然高いです!
そして、重い瓶に入ったワインは流通過程でも、その重量分余計にお金がかかります。重いとサイズも若干ですから、重量でお金を取られようが、容積でお金を取られようが余分にお金がかかります。
超安ワインの場合、瓶に詰めないで液体で輸出する事もあります!そうすると送料は大幅安です。現地で瓶詰めする方法で、「バルクワイン」なんて言い方をされますね。
さらに、高級ワインは温度管理も厳密にしていないと、味わいが崩れるので困ります。その場合、貿易で使うコンテナが「リファーコンテナ」と言うエアコン付きコンテナになります。これも温度管理機能がないドライコンテナに比べるるとだいぶ高くつきます!
安ワインは多少味が崩れても大丈夫です!そんな事気にしません。
ブランドとしての値段
ここまでの工程で、高級ワインはいたるところにお金がちょっとずつかかってきて値段が上がっていくのが分かったと思います。
ですが、ある一定以上はブランドが占める割合は多くなります。
いま、世界的に見るとワインを飲む人口はうなぎ上りです。新興国の富豪たちはこぞってワインをステータスシンボルとしても使いたいので買いに来ます。
一方、昔からの伝統的なワイン産地はボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュなどと決まっていて、面積は増えません!
需要が増えようが、生産量は変わらない。しかも欲しいのは金持ちが多いので、「手に入らない?じゃあ、少しぐらい高くても買うよ!」と言う人が増えてきます。
オークションみたいな効果ですね。需要と供給のバランスが取れていないのが「超」高級ワインです。
ここに関してはコストを大幅に超える値付けがされています!まさにブランド化がされているわけです。
いま一番高いのは圧倒的にブルゴーニュのワインです。ロマネ・コンティがその筆頭ですが、新ヴィンテージの価格が200万円を超える価格で推移しています。10年前の倍ぐらいになってるかもです。。。
まとめ 味に違いはあります!
畑でお金がかかり
醸造でお金がかかり
熟成でお金がかかる
ここまでで、1万円ぐらいまでの高級ワインがなぜ高くなっていったのか、なんとなく掴めたと思います。
ブランドは1万円超えてくると存在してきます。土地代もデカいですが。
手間暇かけて造ると美味しいんですよ!これは手間暇かけた作物が明らかに美味しいのと一緒です。
お肉なんかでも一緒ですね。手間暇かけた牛さんの方が牛肉が旨いのは良く皆さんご存知と思います!
ただ、日本人は普段からワインに慣れ親しんでいるわけではないので、正直最初から高いワインと安いワインの差を感じ取るのは難しいかもしれないのも事実です。
これは、知らない味は人間は感じない!って言う不思議な機能があるからです。感じてなかった味わいでも、例えば「このワインには桃の味があります!」なんて、ソムリエに言われてから、「モモ!モモ!」と念じながらワインを飲むと、本当にモモの味がします!
その経験を人は記憶するので、次回にモモの味がするワインを飲むと、ちゃんと感じられるようになります!「あ、この前のモモだ!」がわかるんです。
そうやって経験を積んでいかないとわからない味って言うのも確かにあるんです。
でもたまにあります。
問答無用に滅茶苦茶旨いワインが!こんな旨い飲み物がこの世に存在してるの?と言う圧倒的な旨さがあるワインに出会うと世界が変わったりもします。
超高級まで行かなくてもいつもより少しだけお金を出すと、美味しい物が沢山有ります!たまの贅沢に3000円ぐらいのワイン飲んでみて下さい^^