・チリワイン ワインの概要
・チリワイン 主な品種
・チリワイン 主要な産地
・チリワイン オススメ生産者
を解説していきます。
詳しくマニアックな情報と言うよりちゃんと主要な所を抑えながら、わかりやすく!を念頭に書いているつもりなので初心者の方でも楽しめると思います!
チリワインワインの概要
南北が、めっちゃ長い事で有名なチリワインに付いて「詳しく」ではなくて、「わかりやすい」解説をしていきます。
地図で御覧の通り、南米の太平洋沿いに縦にながーい産地です。これだけ見ても長そうですが、国全体で言うと大体南北の中央部分、南緯30-38度付近までが主だったワイン産地になっています。
だいたい緯度1度が111kmなので、約900km程、ワイン産地が存在している感じです。が、国の南北の長さは4300km程あるらしいので、これでも中央部の1部に過ぎません。
のちに解説しますが、このまだまだ北でも南でも産地を広げられるところが、未来のチリワインの奥深さになるでしょう!
ちなみに横幅は狭くて、平均175kmしかなく、東側はほぼアルプス山脈が聳え立っています。
気象条件や地形、土壌
チリのワイン産地を語るうえで大切なのが2つの山脈に挟まれている場所が、主だった産地と言う点でしょう。
1つは地図で見ても、とても解りやすい「アンデス山脈」アルゼンチンとの国境も兼ねた、巨大な山脈で最高峰はアコンカグアで7000m弱ある程でかい山脈です。
もう1つは衛星写真で見るとぎりわかるかな?ぐらいの山脈が、サンティアゴの西側に
広がっています。
この、ぎりわかるかな?ぐらいの山脈が海から入ってくる空気の流れを、せき止めているところが重要です!
チリ沖の太平洋を流れる、海流は南極の方から流れてくる寒流のフンボルト海流です。寒流の近くと言うのは、非常に寒くなります!
なので、上の地図で見ると、海沿いのサンアントニオ辺りは結構な涼しさで、年間気温で言えば「5℃~22℃」ぐらい。内陸のサンティアゴ辺りは「3℃~30℃」と夏の気温で言うと8℃も違うわけです。
チリ = 暑い国
なイメージがワイン覚えたての頃に、刷り込まれやすいですが、チリは決して暑いだけの国ではありません!まずここは大きなチェックポイントです。
山があると、海の冷たい風が入ってこないで、暑くなる!と言う話が分かったところで、全体のお天気を見ていきますと、一部の海沿いの地域を除いて、山脈に囲まれた地域は地中海性気候(Mediterranean Climate)に属する所が多いです。
夏は非常によく晴れて、そして乾燥しているのが特徴です。
ほぼ雨が降らない地域なので、ブドウ栽培地の灌漑は必要う不可欠な要素、と言う事になりますが近年、この灌漑用水の確保が問題になりつつあり、雨降らな過ぎて、灌漑用水すらままならない程の水不足に悩まされつつあります。
「手洗いの水すら確保できなくて、コロナ禍でどうするんだ?」と言うニュースを2020年4月に見ましたが、サンティエゴ周辺の雨量が何と過去最低を80%も下回ったそうです。
こんな風にとてつもなくドライなので実は葡萄の病気がほとんど発生しないうえに何故だか葡萄の根っこを食べちゃう、葡萄会では最大の嫌われ者、害虫フィロキセラくんも、いるんだけどほぼ活動をしないそうです。
たまに、チリのワインの樹はフィロキセラ禍前に持ち込まれて植えた物だから、フィロキセラがいない。
なんて話を見かけた事がありますが、実際は流入してきていて存在するそうですが、活動をしないそうです。おそらくドライすぎる環境のせいでは無いか、と思われるそうですよ。
なので、接ぎ木しない樹でもぶっちゃけ、やろうと思えばやれちゃう環境らしいですが、多くの生産者は接ぎ木した葡萄の樹を使います。
これは接ぎ木した方が、思い通りコントロール出来る。と言う面が大きい要素です。
ほぼ病気も発生しないので、農薬もほぼいりません。チリは大規模生産者でも、結構ビオ栽培のワインを発売しています。
頑張ってると言うよりか、実は農薬がいらない!と言う側面があるのです。
チリの悩ましい問題
チリワインが世界中を席巻したのは、1990年代の事です。この頃にとにかく人気を博したのは
しっかりと濃厚な味わいのカベルネ・ソーヴィニヨンが
なんと、こんなにもお安い値段で売られている!
と言う、要素が当時の世界でバカ受けしたからです。日本でも「チリ・カベ」なんて言葉で広められていきました。
丁度、そこ頃はロバート・パーカーの台頭も一緒にセットになって語られる時代です。稀代の濃いワイン好きで、史上最高の影響力があったワイン評論家でしょう。
いまだにパーカーポイントは見かけるけど、表現を過去形にしたのは、もうすでに引退しているからですね。
引退した今でも、彼が主催しているワインアドヴォケイトの付けているポイントを「パーカーポイント」と言う傾向がまだ、日本には残っていますが、アドヴォケイトも売っちゃったし本人引退しちゃったし・・・もう辞めませんかね?
で、現在の「チリ・カベ」ちゃんの世界的な需要は若干落ちてきております。他のニューワールドもそうですが、大味すぎる濃いワインはちょっと嫌われ者になりつつあり、カベルネ・ソーヴィニヨンは世界的な人気が、結構な勢いで落ちている品種です。
特にガストロノミーの世界では全くうけません。最近ではボルドーワインを全く扱わないレストランが普通にゴロゴロと存在している状態です。
人気あったから、カベルネ植えまっくたチリワイン業界はちょっと焦っているのが現状ですが、未来に向かって、新しい産地も開拓しています!
そう、最初の方で言った、南北の長さが生きてきます!今までは濃いワインを作りたいので、暖かい場所を探して産地化していたわけですが、濃いワインがうけなくなったら
今度は国内ワインが美味しく作れる場所。
そう!涼しい場所に葡萄畑を作ればいいのです!南はいくらでも広げる余地はあるし、海沿いの風が入ってくる、涼しい場夜を狙ってピノ・ノワールでも植えちゃいえばいいわけです。
実際、南部のイタタ・ヴァレー、ビオビオ・ヴァレー辺りは新しい生産者がCool Climateな味わいを作り出していて、今後めちゃくちゃ面白くなりそうな予感が、すでに始まっています。
主要な品種
赤ワイン
・カベルネ・ソーヴィニヨン
チリを語るうえでは、第1位はまだまだ、これでしょう。濃くて、しっかりした果実味のあるワインを作ります。
気候がかなり安定しているので、ヴィンテージの色もほとんど感じることなく、安定した品質の物を毎年、大量に作る事が出来ます。
ただ、近年は世界的に人気を落としているのも事実です。
・カルメネール
チリと言えばこれ!と言う自葡萄的な立ち位置の葡萄です。
実際は別に自葡萄ではないですが。しかも昔はメルローだと思ってた時代があり、
濃くてしっかりしたメルローが取れる、クローンだぜ!ぐらいだったのですが、遺伝的に全然違う事が後で発覚しています。
これはカベルネ以上にがっつりしているので今後の人気には相当の疑問符が付きます。
・ピノ・ノワール
チリに今後求められるのは、間違いなくピノ・ノワールでしょう。すでに成功しつつある産地がちらほら出てきています。
最近までは、チリと言えば大味な暖かい味わいのピノ、いかにもニューワールドだな。と言うものが多かったですがさらなる冷涼産地への開拓なども含めてこれから10年、20年先がめちゃくちゃ楽しみな品種です。
・メルロー、シラー
この辺の品種も結構植えられています。まぁ、完全に濃い味全盛期の名残ですね。
僕としては特筆すべき語る事は無いです。今から覚えなくても、いいんじゃないですかね?
シラーはもしかしたら、冷涼地で化けるかもしれません。
白ワイン
・シャルドネ
生産量としてはやはりこれが多いです。チリは明らかに、商業的にワインを生産している国なので国際品種がほとんどを占めています。
安くて旨くて、大量供給できる
に最も適した品種はシャルドネさんを上回る物が無いのではないでしょうか?
一昔前は明らかに、樽ドネ(樽の味わいが強いシャルドネ)が圧倒的な地位を占めましたが、そういうワインはパーカー引退後の世界では、全く受けません!!
とは言え、どこでも育つシャルドネなので樽を使わない、そして冷涼で凝縮感の高い物が作れる産地に移動すればいいだけなので、今後もシャルドネが中心になってくるでしょう。
・ソーヴィニヨン・ブラン
こちらも人気品種です。ロワールやニュージーランドに比べると割とよく熟した感じがする物が多かった印象ですがこちらも冷涼な味わいに、作り替えられつつあります。もともと冷涼な場所での栽培が多いので
酸と熟度のバランスを考えた、適切な収穫と醸造で、現代の味わいに合わせるのは楽だと思います。
栽培地も広げようがいくらでもあるので、需要が高まってくるのではないでしょうか?
・アルザス系品種
リースリング、ゲヴェルツトラミネール、ピノ・グリ。この辺りの品種も、現在の冷涼ブームの中では栽培面積を伸ばしつつある品種です。
イタタ・ヴァレー、ビオビオ・ヴァレー辺りのは、結構おいしいのが出てきていて、見逃せません!お値段も品質に対して、かなり期待できるのもうれしい所です。
主要な産地
現在のチリワイン産地は、4つのパートに分けられます。圧倒的な生産量を誇るのはセントラル・ヴァレーで今までの、安ワインから高級ワインまで、この地が主役でしたが
他の地域が今後大きく重要になってきます!
コキンボ地区(Coquimbo)
他の産地と、ちょっと北に離れた位置にあるのが、コキンボ地区です。
・エルキ・ヴァレー
・リマリ・ヴァレー
が主だった産地で、googleMAPで見ると
この、明らかに緑が無い地帯の川沿いに葡萄畑が築かれています。
標高が高いのと、海風の通り道なので
北の産地なので、結構冷涼地域なので
ソーヴィニヨン・ブランと冷涼な味わいのシラーに定評がります。
アコンカグア地区(Aconcagua)
セントラル・ヴァレーと緯度は大して変わりませんが基本的に海沿いから、セントラル・ヴァレーに向かう渓谷沿いに産地が広がる地区です。
ここもコキンボと同じで、海とその風の通り道である渓谷が冷涼な気候を生み出しているので大きな産地ではないですが、今後とても優良な産地です。
また、一部の風が入ってこない場所は。むしろ「チリで一番」ぐらいに、暑い産地!!と産地名だけで語るのが、若干難しいので、ワイン選びを難解にさせますが、その辺は何回も飲んで、攻略しましょう
赤ワインの生産はピノ・ノワールがメインと言う事で、全体的に見れば涼しいのだと言う事も感じられる要素ではありますので、覚えるなら「アコンカグアは涼しい!」で大丈夫です。
セントラル・ヴァレー(Central Valley)
チリワインの生産はこの地区がメインです。
温暖で巨大、そして平坦な渓谷は安定した葡萄を大量に作るのに、世界でも類まれなる
適性を見せてくれちゃっています。
ただ平坦なので、複雑なワインは生まれ辛い側面はあり基本的には凡庸なワインが多い産地でもあります。
教科書的には、ここの産地が一番覚えろ!なのでしょう
・マイポ・ヴァレー(Maipo Valley)
・ラペル地域
→カチャポアル・ヴァレー(Cachapoal Valley)
→コルチャグア・ヴァレー(Colchaua Valley)
・クリコ・ヴァレー(Curico Valley)
・マウレ・ヴァレー(Maule Valley)
の4産地(ラペルは2つに分けるけど)がよく出てきます。面倒くさいのは、それぞれの産地の中央部分は大体平坦で、安ワインの産地です。
なので、どこの名前だけで、判断がし辛いのがワイン選びで問題なのですが、チリワイン業界もその問題には気が付いていて、後に説明する西と東の問題が、解決してくれます。
南部地区(Southern)
いままであまり見向きされていなかった地区がこちらです。
・イタタ・ヴァレー
・ビオビオ・ヴァレー
と言う、将来有望な産地を抱えていますが教科書的には、まだまだ太字にはなれいていないです。
今までは、「パイス種」と「マスカット・オブ・アレキサンドリア種」による地元消費用のワイン生産が主でしたが
その冷涼な気候に目を付けて、大手や新規生産者がこぞって土地を求めてきているのが、この南部地域です。
特にピノ・ノワールの可能性が相当に期待されていて、そう遠くない将来に「チリ・ピノ」の時代がやってくるかもしれません!
イタタとビオビオを要チェックです!!
西と東の問題
チリは南北に長いのと別で、西と東で同じ産地の中で随分と気候が違う!と言う問題を持っています。
先にも説明したように、西と東が山脈なので西と東は斜面で標高もありますが、真ん中は真っ平です。
そこで、産地名で区分けする以外に
西? 真ん中? 東?
を区別してラベルに表示するルールが出来つつあります。
・西側 コスタ(Costa)
・真ん中 エントレ・コルディリュラス(Entre Cordilleras)
→山脈と山脈に挟まれた地区 と言う意味らしい
・東側 アンデス(Andes)
まだ、これが普及するのかわかりませんがもしラベルで見かけたら、参考になります。西と東は涼しい!真ん中は暑い!です。
オススメの生産者
コノスル(Cono Sur)
自転車マークで同じみ、スーパーでも見かける安ワインですが正直言って、ほかの安ワインを圧倒する旨さです!
プロが審査する、安ワインブラインドティスティングはコノスル禁止ルールがある!って噂がある程ですからその実力は半端ではない。
一番安い1000円を切るレンジでも、品種の特性を勉強したいなら、受験生には持ってこい!ですが
僕のオススメ圧倒的にレゼルヴシリーズです!!
このシリーズはちゃんと葡萄に適切な、産地を選んでいるので冷涼品種には冷涼地!温暖品種には暖かい場所!とすべて完璧なバランスと言っていい仕上がりです。
しかも1000円前半で買えてしまう。。。反則技と言っていい仕上がりです。
個人的なオススメはピノ・ノワールとゲヴェルツ。
ちなみにソムリエ試験受験生に「何飲んで勉強すればいいですか?」と仕事柄よく聞かれるのですが、その時に「とりあえずコノスルのレゼルバ飲んどけ!」が、僕の常套句です。
エラスリス (ERRAZURIZ)
チリNo.1の高級ワインを作る生産者と言えば、エラスリスでしょう。日本での知名度はイマイチな気はしますが、間違いなくチリ1位です。
それを証拠に2010年にニューヨークで行われたブラインドテイスティング大会のTOP5は
1位 エラスリス・カイ2006
2位 オーパス・ワン2006
3位 シャトー・オーブリオン2006
4位 エラスリス ドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・リザーヴ2006
5位 シャトー・ラフィット・ロートシルト2006
5大シャトーを、アメリカの最高峰を抑えて、1位と4位に入ってしまうほどの実力です。
でも、日本だと入ってくる量も少ないのに結構軽く買えちゃいます^^;
「カイ」も「ドン・マキシミアーノ」も結構がっつり系な味わいですが、エラスリスは実は冷涼なアコンカグアにあるので最近のワインは滅茶苦茶エレガントで美味しいです!
先日家で飲んだピノとか、かなりの物でしたよ!2000円ちょいちょいぐらいで買えちゃうし。
アルマヴィーヴァ(Almaviva)
こちらもチリ最高峰と言われるワインです。
あの、5大シャトー、シャトー・ムートン・ロートシルトを所有するバロン・フィリップ・ロスチャイルド家が出資しているワインです。
そのコンセプトと味わいと共に
チリのオーパス・ワン
と言う、とわかりやすいのでは、ないでしょうか?ちゃんと評論家にもかなりの高評価をもらっているチリを代表するワインなのは間違いありません。
残念なのは、あまり入門用の安いレンジが無い事ですかね。買うなら最初から諭吉2枚握りしめてください!!
まとめ
いまチリのワイン産業は、日本で見ているよりもはるかに過渡期です。
濃いワイン全盛期が終わり、次の時代のエレガントワインに対して大きく舵を切りつつある状態ですが、なんせ南北に長いので、涼しい産地は開拓すればいいだけです!
温暖産地は人気の問題もありますが、それ以上に干ばつの問題も大きく、変わりゆくチリワインをリアルタイムで眺められる20年ぐらいになるのではないでしょうか?
いずれにしても、お財布にはとてもやさしく、半端ではないポテンシャルを秘めた場所それがチリワインの魅力であります!