・オーストリア ワインの概要
・オーストリア 主な品種
・オーストリア 主要な産地
・オーストリア オススメ生産者
を解説していきます。
詳しくマニアックな情報と言うよりもちゃんと主要な所を抑えながら、わかりやすく!を念頭に書いているつもりなので、初心者の方でも楽しめると思います!
尚、アルファベット表記に、言語特有の記号はつけません!これは文字化けなどの可能性があるからで、あえてつけていません。
オーストリアワインの概要
オーストラリアじゃないですよ!オーストリアですよ!そう、ちょっとわかり辛いんですよね。国名が。
オーストリアはドイツの東側にある国です。そこそこ緯度が高く、北緯48度付近にワイン産地があります。ワインベルト的には北緯30-50度なので、ほぼ北限と言う事です。有名な産地で言うと、シャンパーニュぐらいですかね。
なお国の西側はほとんどアルプス山脈なので、ワイン産地は東側に集中しており、スロヴェニア、ハンガリー、チェコ共和国と国境が隣接しています。
気象条件など
ほぼほぼ北限で、大陸性気候(Continental Climate)に属する国なので、ほとんどの地域が冷涼地帯(Cool Climate)に属します。
さらにアルプス山脈からは冷たい風が入ってきて西側はより涼しくなります。北側も北半球ならあたりまえー!の北風がやってきて涼しいですが、一部は、南と東からは(つまりハンガリー、スロヴェニア側)から、暖かい空気が入ってくる場所もあるようです。
年間を通して降雨も少なく、ドライな環境。北半球の上の方なので、夏場の日照時間は極めて長い!!
ヨーロッパの北側日照時間を、日本人の常識で考えてはだめです!一番長い季節だと、「日の出が5時」~「日の入り21時」と実に16時間もお日様がいる時間があります。
日本の夏至で 4:30-19:00 つまり14時間半なので現実としても、1時間半ほど日が出てる時間が長い以上に日の出、日の入り前後の時間の薄明るいタイムも長いです。
さらにお天気もいいので、日光を沢山浴びた葡萄を栽培する事が可能です。
ワインのルールはわかりづらい
他のヨーロッパの生産地同様、法律で原産地呼称などが定められています。
が、これがもの凄いわかり辛い!ドイツもですが、甘さで独自ルール作るの辞めて欲しい。覚える気がなくなるわ!!ってなります。
甘さの規定はここでは説明しません。ドイツ編の格付け説明にまとめます。
ただ、ドイツにない所があって、そこだけ書きます。
・アウスブルッフ(Ausbruch)
→ベーレンアウスレーゼとトロッケンベーレンアウスレーゼの中間
・シュトローヴァイン(Strohwein)
→冬の間、藁の上で寝かせた葡萄を使用
別に覚えなくていいと思います。
地域のルールでも面倒くさいのが、まず基本的にはPDO(原産地呼称の総称)を名乗るのは4つの州と16の小地域があります。
4つの州はいいですね。簡単です。
問題なのは16の小地域なのですが、この中で
・クヴァリツーテヴァイン(Qualitatswein)
・DAC(Districus Austria Controllatus)
の2つに分かれてしまっています。
「あー、もう嫌だ。わからない。」言う人はここから先は読まなくて大丈夫です!僕もこの記事書かなきゃ、多分覚えてません!
まず、クヴァリツーテヴァインは上の4州、16地域に名乗る権利があります!がっ!DACを名乗ってもいいのです。
それで、DACですが、これはその地域が名乗るかどうか地元の中で協議して「自ら決めていい!」と言うルールがあります。
ただ、DACを名乗るルールは定められており
・使える葡萄(単一でも複数でもOK)
・そのDACを名乗るワインのスタイル(辛口とか甘口とかも含めて)
をきっちり定めて、地元が合意すればOKです。フランスのAOP法に似ている部分があります。
ちなみにルールから外れたワインはクヴァリツーテヴァインにはなれますが、「地域名」ではなく「州名」までしか名乗れなくなりますので、価格が上げづらくなります。
そして、さらに面倒くさいのがNo.1の産地であるヴァッハウ(Wachau)はDACを名乗る事を放棄しているので、どっちが上なのか、わからなくなってしまってるのが、現状です。
主要な品種
赤ワイン
赤ワインから説明しますが、主役は完全に白ワイン!な国です
・ツヴァイゲルト(Zweigelt)
オーストリア独自の葡萄です。他の国で見たことは・・・ないですね。
「ブランフレキッシュ」と「サン・ローラン」の交配品種で結構深い色のワインを作りますが、見た目よりもタンニン分は少なく、飲みやすい爽やかワインを作ります。
・ブランウンフレキッシュ(Blaufranlich)
オーストリア独自の黒ブドウとしてはもっとも評価が高いのが、この品種です。ちなみにツヴァイゲルトの親。
タンニンは程々で、酸が高くサワーチェリーの風味の味わい。が教科書的な書き方です。
冷涼系の味わいを作れるのでこれからもっと伸びてくる品種だと思います!
・サン・ローラン
こちらもオーストリア独自の葡萄にしてツヴァイゲルトの親でもあります。
わりかしピノ・ノワールに似た味わいがする葡萄なので・・・どうでしょう?マーケット的にピノ・ノワールに駆逐されてしまうような気がしてならない品種です。
・ブラウアー ブルグンダー(Blauer Burgunder)
名前変わってますが、早い話がピノ・ノワールです。
やはり世界市場でワインを売りたいとなるとこういった国際品種が台頭してきます。
とは言え温暖化の影響も加味すると今後、こういった冷涼地域のピノ・ノワールは
滅茶苦茶伸びる一方でしょう!
安いうちに、いろいろ飲んでお気に入りの生産者見つけておきましょう。さもないと、ピノはすぐ値上がりすると思います。
白ワイン
・グリューナーフェルトリーナー
オーストリアでは圧倒的に重要な品種がこれです。
オーストリア = グリューナー
が今現在の世界的な共通認識だと思います。
今はやりの冷涼ワイン(Cool Climate)的な味わいにもの凄い合致した、酸がスーっと通る味わいです。いい物になると、かなり凝縮感が上がり意外なまでにボディのある味わいの物も作られます。
ボディに関しては、樽の味わいではない!と言うのが、こういった品種のボディある物を飲むと認識出来るかと思いますので、お勉強用にも最適です。
多くは、さっぱり系なので、夏場にグビグビ飲むにはめちゃくちゃ美味しいです!
柑橘類とかストーンフルーツと言われる「有核果実」(モモとかですね)のフルーティーな味わいと、きれいな酸が最高です。
・ヴェルシュリースリング(Welchriesling)
名前にリースリングが入っていますが、全くの別品種です。遺伝的にも、親戚ですらないそうですよ。辛口ワインにすると、ややシンプル過ぎちゃうのでスパークリングワイン用に使われたりが多いですね。
後はなんせ、貴腐ワインにも使われます!
これ飲んどけ!ではないですが、ここはソムリエ試験受ける人はリースリングとは親戚ですらない、貴腐に使う葡萄と覚えてはおきましょう。
・リースリング
ドイツ、アルザス同様、オーストリアでも作っています。
通常は辛口で作るので、アルザススタイルに近いかも。しっかりとした、果実感が乗るのは、ドイツ程寒くない、そしてだいたい川沿いで、日当たりがめちゃくちゃいいからです!
後程説明しますが、川沿いの日当たりの良さは寒い地域ではかなり重要でした。
(最近温暖化傾向なので、実はこれが邪魔になりつつある)
主要な産地
ニーダーエスターライヒ(Niederosterreich)
オーストリアの4つの州の中で、最大の産地がここです。
ドイツにも流れている有名な、ドナウ川沿いにある産地です。ドナウ川から離れたところにも、結構広がっていますがいい産地は、川沿いに集中しています。
川沿いが重要な要素なのは、昔は今よりも寒く「川沿いでないと、葡萄が完熟しなかった!」のが大きな理由です。
だいたい川沿いの産地は、傾斜がきつい所に葡萄畑を築きます。
そうすると、畑に段々が出来上がり、日陰になる部分が減ります。さらに川に反射した照り返しの日光も注ぎます!こうして日照量を稼ぐわけですね。
さらに川沿いと言うのは周囲より、夏は気温を下げますが寒くなると、むしろ気温を上げます!川が凍り付かない限り、水温は0度を下回りませんからね。
寒い地域ではこうして、熱エネルギーを何とか稼いでいました。
余談はおしまいにして、この地域ですが主なブドウ品種はグリューナーフェルトリーナーとリースリングです。
グリューナーの方が知名度は高いですが値段が高いのはリースリング。と言う傾向もあります。この辺は国際品種の強い所ですね。
ニーダーエスターライヒには小地区が8つあるのですがその中でも群を抜いて評価が高いのがヴァッハウ(Wachau)です。
・ヴァッハウ
ニーダーエスターライヒと言うか、オーストリア全土でも圧倒的に評価が高いのが、このヴァッハウです。
完全にオーストリアのグラン・クリュと言いきっても大丈夫!な地位を確固たるものにしています。
地図で見るとわかりますが、ちょうどドナウ川がグニャグニャ蛇行しています。このおかげで、方角的には様々な方角を向いた畑を気付けるので、バラエティにもと見ます。(南向きは暑いし、北向きは寒い。この辺だと北向き寒すぎるけど)
最良の畑はやはり、川沿いの段々畑に気付かれている事が多くこの地域の最上のリースリングは長期熟成にも耐えられる、とーっても素晴らしい物が出来ますがね、お値段も素晴らしくグランクリュです!(悲しいす)
グリューナーもお勉強用フルボディを買うならヴァッハウの優良生産者をお求めくださいませ!
ブルゲンラント(Burgenland)
オーストリアでは2番目に大きい生産地です。
珍しく2つ目のgoogleMAPを使いました。
オーストリアは教科書で見るよりも、航空写真で見ると、ほー、なるほどね。と思う事が多いからですね。
この地域の特徴は「ノイジードラーゼ湖」と言う湖がある事です。そこから南に延びる川沿いが、スロヴェニア付近までブドウ産地が続く、南北に長い産地で、
北は白ブドウ 南は黒ブドウ
な、傾向があります。
ノイジードラーゼ湖は平均水深が1m以下と言うデカいのにめちゃくちゃ浅い湖です。遊びたい放題ですね!
よー霧が出るので、貴腐ワインを作るのにとっても向いている産地で、ヴェルシュリースリング種の生産がもっとも多いのがこの周辺です。
南に行くと、黒ブドウの産地が続きツヴァイゲルトが最も栽培面積的には大きく生産され、ブラウンフレキッシュ、サンローランと自葡萄からピノ・ノワール、メルロー、一部カベルネ・ソーヴィニヨンもあるそうです。
この辺のカベルネは飲んだことないですが、怒られるかもせしれませんが、たぶん美味しくないでしょうね。ロワールのフランみたいに青さが勝ちそうです。
ウィーン(Wien)
はいっ。「少年合唱団」までが、一括りの単語なんじゃないか?と言うぐらい、われわれの頭に刷り込まれている、あのウィーンです!
ここ大きな産地ではないのですが、
・都心部にほど近い場所に葡萄畑がある
・ヴィーナー・ゲミシュター・サッツDAC(WIENER GEMISCHTER SATZ)
と言う特殊な事があります。
まぁ、都心部に近いのは「ふーん、そうなんだ」で十分な認識でせすから、割愛。
ヴィーナー・ゲミシュター・サッツに付いて書きます。
このDACの特殊な事は「混植根醸」をする所です。字面だけだとわかりづらいですね。
要は、1つの畑の中に多品種の葡萄が植えてあり、
特にブドウ品種を分けることなく収穫して
そして、そのまま潰して、ワインにしちゃう方法
ですね。
ちなみに最低3種類で、一番多いのでも50%を超えちゃいけないのと3種類は絶対に10%を超えなきゃいけないルールがあるそうです。
混植根醸ワイン、品質の安定性がかなり高くいま世界的にも注目されている栽培法です。
これは余談ですが、温暖化の影響で気候が変わってきているので単一品種がだいぶリスキーになって来てるんですね。
そこで今世界では「フィールドブレンド」と言う言葉が流行って来ています!混植混醸とまでいかなくても、多品種をブレンドして、一つの味わいを作る!というボルドー的な発想に切り替わり始めています。
オススメの生産者
エメリッヒ クノール EMMERICH KNOLL
ジェームス・サックリングが公表している、2019年オーストリアワインTOP100で1位に輝いているのがここの「RIESLING WACHAU RIED KELLERBERG SMARAGD 2018」
全く同じワインは、見つからないかもしれませんがオーストリアの上級なワインを飲みたければ試してみる価値のある生産者です。
ヴァッハウにあり、長い200年の歴史を誇る、老舗ワイナリーでもあります。が、クラシックな生産者に在りがちな、イマイチラベルです。
リースリングの方が評価高いと言えどグリューナーもTOP100では9位にランクイン。目実共にオーストリアを代表する生産者です。
F.X ピヒラー F.X. PICHLER
こちらはTOP100で2018年は1位 2019年も2位に輝くトップワイナリーの1つです。
旧世界にしては、新し目な生産者で1980年代がスタートです。それでも、あのロバート・パーカーに
F.X.ピヒラーはシャトー・ラトゥール、ドメーヌ・ロマネコンティ等の
トップワイナリーに 並び称される
とまで言わしめた、超実力派です。
ヴァッハウのワインを飲むならまずこの2つが入り口になるとそこから世界が切り開けると思います!
ゲミシュター・サッツ(ここだけワイン名)
本当は、ピンポイントの生産者を紹介したいのですが、日本で買えるもので、これと言って特筆すべき人が思いつかず、全体でのご紹介になります。
今後のワインを見ていくうえで外せないのがこの「混植混醸」ワインです。
フィールドブレンドと言うブームが間違いなく、この先大きくなってくる中、1週周って先進的なワインになってきますよ!
いまからとりあえず1本抑えてみると将来自慢できるかもしれません。
まとめ
オーストリアは基本的に涼し国ですから今後の温暖化でも、ワイン生産自体が出来なくなる。なんて心配はしなくていい国です。
かつて寒すぎて、作り辛かったピノ・ノワールなんて伸びてくるでしょうね。
オーストリアの「グリューナーフェルトリーナー」
スペインの「アルバニーリョ」
ギリシャの「アシリティコ」
は軽めの白ワインとして、急速に人気が出ている3大モダン白ワイン品種です。
ソムリエになるなら、あたりまえー!で抑えておきましょう。