ワイン当たり年がニューワールドでは語られない理由を解説

ワインってよく「○○年はいいヴィンテージなの?」とか「当たり年」についての話になりますよね。

でももう少し学んでいったときに「あれ?ニューワールドのワインって当たり年とか語らないよな?」と言う事にも気が付きませんか?

ヴィンテージの差異はニューワールドでもあるだろ?

って疑問に行きつきますよね。
(僕この問題しばらく昔は解決しなかったですね。)

答えから言ってしまうと

ニューワールドはヴィンテージの差が物凄く小さい

のは本当の事です。

正確にはヴィンテージの差がある国もあります!が、大部分はヴィンテージの差が出ません

でもなんで物凄く差が小さいのか?その理由を解説していきたいと思います。

ヴィンテージの差ってなんだろ?

そもそもヴィンテージの差って何によってもたらされる物なのかを解説していきます。

ワインは原材料がご存じの通りブドウです。

ブドウは北半球だと3月ぐらいに芽を出して、9月ぐらいに収穫される果物なのは、まぁわかるじゃないですか。

作物なので天候によって出来が変わる事も、日本にいても感じるはずです。

長雨が続いたり、明らかに日照不足だと

「おいおい?レタス1つ500円だと?しかも小ぶりだし。。。高すぎる・・・」

と言う、作物の不作が発生するじゃないですか。

ブドウも全く同じで、天候が悪いと、不作になったり、出来上がっても大して甘くないブドウなんかが出来ちゃうわけですよ。

天気の部分では雨が多いと「病気」の発生も多くなります。「病気」は大部分を占めるのが「カビ系」(ベト病、うどんこ病、灰カビ病etc)の病気なので湿気が多いと発生するんですよね。

ブドウの房を想像して下さい。

粒と粒の間が詰まってて濡れたら中が乾かなそうじゃないですか?雨降るとこの隙間にも水は行っちゃうのでただですら湿度上がるのに、さらに水分を供給してくれちゃうので「カビ」ちゃうんですよ。

カビたブドウは使えませんからね。

つまり天気が悪いと

ブドウの収穫量が落ちる
甘くないブドウが出来る

と言う問題が起きます。

続いてワインが出来上がるメカニズムの話になると、ワインは「果汁酵母発酵」させて作ります。その発酵と言うのは「糖分二酸化炭素アルコール変換」する活動の事です。

ですから「甘くないブドウ = 糖度が低い」を発酵させると糖分が不足してしまうので、結果としてアルコール度数が12%まで上がらない・・・これはこまった!「よし!砂糖足しちゃえ!」と砂糖を人工的に添加する事になります。

人工的に砂糖を足したワインは正直言って薄っぺらくなります。ブドウにはその他の成分も沢山あるわけですから、砂糖を足すと相対的に他の成分が薄まっちゃうからですね。

ワインが薄まっちゃう理由パート2もあって、それは「収穫直前の雨」です。

ブドウは収穫間近の生育期になると、根っこから吸った水分がほとんど果実に運ばれる性質があります。だって葉っぱとか成長させる必要がもうない状態ですからね。

植物の本能から言えば「目立って」鳥に食べてもらって種を遠くに運んでもらいたいわけですから、果実を目立たせたい状態です。

ですから収穫直前に降った雨はそのまま果実に流れ込むのですが、朝と夕方でも「ブドウデカくなった?」って見て取れるほど水分を吸います。そんな急に膨らんだ水分は「ただの水」でし。

栄養素とか糖分、あと重要なフェノール類なんかも全く含まない「ただの水」が果実の中に入っちゃうので・・・果汁を水で薄めたのと同じです。

そんなブドウでワイン作ったら・・・薄っぺらくなっちゃうんですよ。

つまり収穫直前に雨が降ると

ブドウが水膨れする

と言う問題が発生して、美味しくないワインになっちゃうわけです。

① ② ③で上げた問題が、ワインのヴィンテージにおける差として一番大きい要素です。その他にもいろいろ微妙な差は出ますが

年によっての気象の差 = ヴィンテージの差

と言って間違いありません。

ニューワールドは変化が少ない

ヴィンテージの違いが圧倒的に語られる地域がフランスです。

毎年「今年の出来はどうだ?」ってワインファンならヤキモキしながら知りたい情報になるわけですが、ここにWine Advocateさんが公開してるヴィンテージチャートがあります。

出典:Wine Advocate

クリックするとでかいですけど世界のチャートが開きます。

見るとわかると思いますが、フランスがかなり色がまだらになって(特に90年代は悪い)ニューワールドはオレンジ色かもっといい黄色に集中してるのがわかりますよね。

やっぱりヴィンテージの差がニューワールドでは少ない事がわかると思います。

さて、その理由が最初に説明した「気象条件」なわけです。

ニューワールドは天気が安定してる

フランスに限らずヨーロッパは割と天候が安定していません!「夏場の天候が安定している」と言うブドウの生育にとって都合がいい「地中海性気候」の部分に関しては実は安定しています。

なのでいかにも地中海沿いっぽい地域を見てみると、ヴィンテージの差異が少ないんですよよ。

フランスだとラングドックとか、あとスペインとか安定しています。

フランスでも特に安定しないのが「海洋性気候」のボルドーです。海洋性気候は日本にいる我々には物凄くなじみが深い天候で、水多いですからね。雨が多いんですよ。

だからこそヴィンテージが大事になってきます。

もう1つの気候帯、大陸性気候の部分は(シャンパーニュとかブルゴーニュ、アルザス)は地形によります。海からの風が入ってくる場所は雨が降るし、海風が入ってこない所は雨が降りません!

シャンパーニュとブルゴーニュはわりと降る地域なので、ヴィンテージ差が出やすいのに、アルザスは西にあるヴォージュ山脈がほぼほぼすべてを遮断するので、雨がかなり降りません。

よってここでもヴィンテージの差異が出やすいかどうかが出てきます。

が!!ニューワールドの産地って後から造られた産地なので、ブドウ栽培は雨が降らない方が楽だし安定する!ってのを知ってる人たちが開拓した産地がほとんどです。

その結果、ここでブドウ作ったらいいんじゃない?と言う知識を元に開拓された産地が多いので、ブドウの生育期に関しては「雨が降らない」とい言っても過言ではない場所に産地を「後から開拓した」ので、ヨーロッパの気象条件と違い、年間の気候がほぼ計算できるんです。

一部、オーストラリアの東海岸とかニュージーランドは雨が降る産地なので、ここら辺はヴィンテージの差が実は出るんですよね。

この辺はもともとワイン飲む文化がある人たちが島流されて開拓した産地だからでしょうね。条件が悪かろうがブドウを植えてんです。だってお酒飲みたいもん。

水がまける

もう1つ決定的な差が「水がまける」事です。

ヨーロッパはEU法でブドウ畑に水を撒く行為つまり「灌漑」(irrigation)が禁止されています。いくら雨が降らない気候で、干ばつに困っても収穫するブドウの樹には水をあげちゃいけません。

若い成長段階の樹で「収穫しない」ならOKです。

なので、最近特に温暖化で干ばつが激しくなりつつある地域では「水不足」に困っています。雨降らなすぎるとブドウって成長が止まるんですよね。

収穫量半減なんて事も起こっている困った問題です。

ですが、ニューワールドはもともと雨が降らないの前提で産地を開拓してるので、最初から「水は撒いてもいい」つまり「灌漑」していいんですよ。

そうすると雨は降らないけど、ブドウの樹にあげる水の量はコントロール出来ちゃいます。

ブドウの生育に必要な分だけ水を上げて、過剰でも不足でもない最高の条件を人工的に作り出すことが可能なんです。だって雨は降らないんですから!!

そうするとブドウの収穫時にはどうでしょうか?

当然ですけど理想的な状態で収穫できる可能性が高いどころか、ほぼ計算して最高の条件で収穫にこぎつけられる事が約束されてるんです。

ヴィンテージの差なんてほとんど出ないのは、こうやって気象条件を人工的にコントロールしているからなんですよ。

ただし、最近は涼しさを求めて産地を新しく開拓していり、雨が降らなすぎる地域は温暖化の影響により「灌漑用水不足」と言う問題も発生しつつあります。

もう畑に撒く水すら足らない状態になりつつある地域があるんです(チリとかやばいらしいです)

そうなるとある程度の降雨を覚悟で開拓される産地も出てくるので、10~20年後にはニューワールドもヴィンテージが気になるようになってくるかもしれません。

まとめ

色々書きましたが要点は簡単です。

・ニューワールドは天候安定してる所が多い

・ニューワールドは水をまける(灌漑)

がニューワールドのヴィンテージに差が出ない理由です。

ヨーロッパはその正反対で

・天候が安定しない
 →日照不足
 →雨と湿気で病気発生
 →雨でブドウ水膨れ

・水がまけない

が理由でヴィンテージよる差が出やすいんです。

世界の「雨が降らない」に関しては近年オーストラリアとかカリフォルニアの山火事のニュースでも何となくわかりますよね?カラカラすぎて燃えちゃうんですよ。

日本にいると想像し辛い事が多いのがワインの生産に関する気候と土壌ですが、少しづつ理解できるようになると、さらにワインが楽しくなりますよ!!