シェリー酒を初心者にもわかりやすく解説

シェリー酒は、細かく解説すると、細かすぎるし、簡単に解説すると、「ソレラシステムってのがありまして。」ぐらいの説明になりがちなので、ここでは沢山あるスタイルの中から主だった3つの分類に分けて解説します。

シェリー酒の博士みたいな知識は持ち合わせていませんので、これ以上、上級の解説を今後アップデートする予定もございませんが、シェリーの理解において重要な部分は十分にわかると思いますよ。

・シェリーは大別したら3種類
・シェリー酒の生産地について(気候、土壌)
・3種類の作り方を個別に解説

この3点について順を追って解説しましょう!

シャリー酒は大別したら3種類

シェリー酒ってなじみも薄いですし、正直言って日本人が好んで飲みそうな味わいでもありません。ですからより馴染まないのですが、ソムリエ試験やワインエキスパート、WSETなどの試験を受ける上では必要な知識ではあります。

とは言え、教材見てても結構わかりづらいですし、ボトルで買って飲むのも大変ですし、テイスティングの機会もあまりないですよね。

プロフェッショナルなシーンや、もしかしたらあるかもしれない、テイスティングのチャンスにおいて、ここを押さえておくと、理解が一気に深まる!そんな点が、この3つの種類を理解しておくことです。

シェリーの種類

とりあえず、全種類を書き出すと

・ペール・クリーム
フィノ/マンサリーニャ

・アモンティリャード
・ミディアム
オロロソ
・クリーム

ペドロ・ヒメネス

なんて7つぐらいに分類されます。

途中の空いた行間でスタイルのが違い、その中でも有名な物を今回解説する、主な3種類と言う事で赤文字にしてあります。

それぞれ、違った作り方をしたりするので、後程スタイルとともに解説をします。

シェリーの概要

出典: Fernando Beteta

産地の解説に行く前に、ちょっとだけ大前提のシェリー酒って何よ?って所を書いておきましょう。

・酒精強化酒(Fortified Wine)
・スペインのお酒
・作り方に独特な技法がある

なんてところしょうか?大体の場合「産膜酵母」を使って「ソレラ・システム」を使って作る。みたいな解説になる事が多くて、僕自身もしばらくはシェリー酒は産膜酵母を使ってソレラシステムで作るんだ!

なんて思っていましたが、産膜酵母は使わない作り方もあるんですよね。なんかそっちはスポットライトが当たらずに無視されてる感じがします。。。

概要はざっくりこれぐらいにして、産地と作り方の解説で、理解していきましょう!

シェリー酒の産地

シェリー酒はスペインのだいぶ南で、ジブラルタル海峡近くの「ヘレス」(Jerez)の町周辺が産地になります。海の先にはアフリカが見えちゃうぐらいアフリカよりです。

海沿いの街ですが、海洋性気候よりも地中海性気候の特徴の方が、はっきりしている地域で、夏場の雨が少ないです。

とは言え、海沿いなので雨はそれなりに夏以外の時期には降ります。

夏場の雨が少ない事は結構な問題になるので、生産者たちは冬場の雨をいかに地中に貯めこむか!に結構な力を注ぎます。

土壌はアルバリサ土壌

この辺の土壌は「アルバリサ土壌」呼ばれる白亜の石灰土壌が多く含まれて、しかもその層が深いので、水捌けはいいけど、水を保持する力も強い。わりと理想的な土壌です。

この水分保持を最大限に生かすために、生産者たちは、秋の収穫後に畑の畝間に穴を掘って、冬場に降った雨をなるべく逃さずに地中に貯めこもうとします。

春になると土を入れ返して、そのうち乾燥すると、今度は密封状態になって蒸発も防げるそうです。なんとも都合のいい土をしてらっしゃいます。

この土壌のおかげで乾燥した夏を過ごすことになる、地中海性気候のしかも熱い南部においてもブドウ栽培を可能にしています。

気候はとっても暑い

気候に関しては、ちょいちょい触れてる通り、基本的には地中海性気候です。夏場の雨は干ばつか?ってぐらいに降らないみたいですが、海に近いので冬場とかには結構降ってくれます。

何よりの気候上の特徴は、この辺はワイン栽培地としてはだいぶ暑い事ですね。夏場の最高気温は平気で35℃ぐらいまで上がる地域なので育つ品種も限られますし、収穫期が暑いので、ブドウの酸化にも注意が必要です。

海岸に近い畑では「ポニエンテ」と呼ばれるちょっと涼しい風が入ってくるのが救いのようですが、それとは逆に東から夏にたまに襲ってくる風が「レバンテ」と呼ばれる、乾燥して暑い風です。俗にいう「熱波」ですね。

地中海沿いの共通の問題ですが、最近この「熱波」が非常に驚異的な事になってきています。熱波はアフリカの砂漠から、風に乗って北上してくる、アフリカの空気です。ここのところの地球温暖化の影響で、熱波の襲来は増えていて、記憶に新しい2019年は2度大規模な「熱波」がヨーロッパを襲いました。

パリまで気温が40℃に達するぐらい北上したので、地中海沿いはもっと温度が上がり、43℃なんかを記録しています。ここまで気温が上がると、ブドウは干からびてしまいますし、そもそも樹も死んでしまう可能性が出てきます。

超海沿いは海の温度があるので、結構気温は抑えられますが、少し内陸に行くと死活問題に発展してきています。

南仏やイタリアも同じ問題を抱えていますので、知っておいて損はないですよ。

ブドウの品種は?

限られた品種しか育たないことも元より、シェリー酒は基本的には熟成工程で味わいが決まるお酒です。

歴史的にはそれしか作れなかったのでしょうが、熟成工程で味わいを作るうえで、それなりに重要な要素として、ブドウの味わいがニュートラルな方が、熟成工程の味わいを表現するのに向いています。

なんので、主な品種である「パロミノ」(Palomino)はそのままワインを作ったら、味も香りもフラットなクソつまらないワインしか作れない品種です。真剣に作ったら多少いい物で出来るかもですが、めったに見ません。

もう1つ有名なのが「ペドロ・ヒメネス」(Pedro Ximenez)です。こちらもかなりフラットな味わいらしいですが、パロミノより果皮が薄くて天日干しするのに都合がいいので、天日干ししたブドウから作る、甘口シェリー酒の原料として生産されています。

あと、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」も甘口用に多少生産があるみたいですが、さほど重要性は高くないかな。

シャリー酒の作り方

これから主な3つの作り方を解説していきます!

甘口だけ全くの別スタイルなので、単独で解説しますが、最初のフィノとオロロソは途中の段階までは同じ事をします。まず同じところまでを解説して、分岐点から別々の解説をしていきましょう。

フィノとオロロソはまったく違うスタイルで、

フィノは「生物学的熟成」
オロロソは「酸化熟成」

で作られるシェリー酒になります。

その分岐点の前、つまり酒精強化をする前のワイン造り工程はまったく同じ道をたどります。

まず、収穫期は暑いので、酸化しないようにとにかく、とっとと圧搾します。大きなステンレス層のタンクが主流で、ここで発酵も20~25℃ぐらいと白ワインとしては、ちょっと高めの温度で醸造します。

ちょっと高めだと果実感などのアロマが弱くなるのですが、それが狙いでもあります。フラットな味わいのワインを作りたいんです!

その後、少しだけ熟成期間をとるのですが、取ると言っても冬の前までです。この冬の前までの段階で若干「フロール」と呼ばれる、この後重要になってくる「産膜酵母」が形成され始めます。

そして、ここで「フィノになるのか?」「オロロソになるのか?」を分類します。分類の基準は生物学的熟成に進むフィノの方が色が薄くて、エレガントなスタイル。オロロソはその反対、ちょっと色が濃くて重た目のワインを選択します。

さぁ、ここからは別々の解説です。と、その前にソレラシステムの概念は共通の方法なのでソレラシステムについて解説します。

ソレラシステムとは?

ソレラシステムは早い話が、古いワインと新しワインを混ぜて、均質化する方法です。そして、混ぜるにも段階を作って出荷直前の「ソレラ」に向かって、数段回の熟成段階にわかれます。

最大14段階とかに分かれることもあるそうですが、そこまで行くと面倒くさいので、とりあえず3段階ぐらいある物を前提に解説します。

出荷前の樽を「ソレラ」と呼びその前をレベルで分けると、ソレラ一歩手前が「Level1」、その手前は「Level2」とします。ちなみにレベルには名前があって、「クリアデラ」と言いますが、クリアデラだと覚えられないので、説明上は省きます。

そして、まだ「Level」がついていない「ソブレタブラ」がいるわけです。

ソレラ - Level1 - Level2 - ソブレタブラ

の順番です。絵にするとこんな感じです。

ちなみに色合いですが、オロロソの場合はこんな風に段階を経て濃くなっていきますが、フィノではこんなに濃くなりません!そこんとこ注意です。

一度に全部抜き取るわけではなくて、一定の量を抜いて、その前の熟成段階から補充する感じです。この時重要なのはどの段階も、まったく同じ量抜き取る事です!

違った量を抜き取ってしまうと、段階によって量がばらばらになってしまうと、後々「おい!Level2全然たんねぇじゃねぇか!!」ともめ事が起こる事請け合いです。職人の人が「激おこぷんぷん丸」になるのは火を見るより明らかです。やめときましょう。

ソレラシステムでもう1つ大事なのは、熟成期間が長いので、もはやワイナリーの財産です!!日本で言うと「継ぎ足してきた秘伝のたれ」みたいなもんです。秘伝のたれが事故で無くなったら店の歴史100年が飛んでしまいます。

なので、リスクヘッジの為にも同じ熟成段階の樽を数か所にばらして置いておく対処が割と一般的に行われています。

さぁ、ソレラシステムがわかったので、スタイル別作り方に移りましょう。

フィノの作り方

ワイン作りの段階で、色が薄くてエレガントなスタイルだった、ワインを選抜してフィノにするのですが、まず最初に酒精強化されます。アルコール度数96%ぐらいの味わいがフラットなスピリッツで酒精強化する時、気を付けなくてはいけないのは、アルコール度数を15~15.5%の範囲にしなくてはいけない事です。

これ以上の酒精強化をすると、この後の熟成でもっとも重要なフロール(産膜酵母)が死んでしまうからです。死んだらダメだ!

アルコール度数が15%程度になったワインは樽に入れて貯蔵します。この最初に入れたところが「ソブレタブラ」と呼ばれる状態です。ここで数か月、表面にフロールが形成されて、いよいよシェリー酒っぽい「ソレラシステム」に移管していきます。

先輩「ソレラ」ちゃんからワインが出荷されたら、だんだん下に移されて、ソブレタブラからもLevel2に移されるわけです。そして、この段階ですでにソブレタブラ内ではフロールが形成されていて、表面がちゃんと産膜酵母で覆われている事が重要です。産膜酵母は表面を覆うので、ワインが酸素に触れるのを防ぐ役割もあります。

フィノは酸化したいんじゃなくて、産膜酵母による熟成をしたいシェリー酒です。ですから産膜酵母で表面を覆いきれてないと、酸化してしまうのです。

ですから、この段階でフロールが張り切れてないソブレタブラは、脱落です。フィノにはなれません。仕方がないので酒精強化して、オロロソに回ってもらいます。残念。

晴れて、フィノに回れたソブレタブラだけが生物学的熟成と呼ばれる熟成方法で作るフィノになれるわけです。

ちょっと産膜酵母を科学しながら

フロールは産膜酵母と呼ばれるぐらいで、酵母です。つまり生き物なわけですね。

酸素とアルコールを栄養にして繁殖する酵母で、二酸化炭素とアセトアルデヒドを生成するのが特徴です。そう、このアセトアルデヒドがフィノの香りの特徴で日本語では「木香様臭」なんて表現されます。まぁ、草木やわらみたいな香りですかね。

またそんなに超長生きできないのは熟成期間が長くなると、ワインの中の栄養がなくなってくるからです。なので、フィノの熟成は3~4年ぐらいがほとんどで、7年を超えるのはほぼ無理みたいです。

またフィノの特徴ですが、瓶詰めした後は早く飲むべきです。基本的には酸化スタイルではないので、酸化しちゃうんですね。生物学的熟成の新鮮さと言うものが飛ぶのも早いので、早飲みが推奨されます。

見た目の特徴としてフィノは色が薄いです!

オロロソの作り方

こちらは、ワイン造りの段階で、それなりに色もあって、ボディがある物が回されてきます。

この段階で酒精強化するのは一緒ですが、フィノと違い「アルコール17%」まで酒精強化します。17%ではもはやフロールは生きていけないので、フロールが形成されることはありません!

ここからは「ソレラシステムで熟成」させていく、と言うシステム自体は同じですが、産膜酵母がない為、空気と触れ合う面積がだいぶ大きく、酸化による熟成が進むのがオロロソの特徴です。

酸化熟成と言えど、やり過ぎたら普通はただただ酸化したワインになってします所を、定期的に若いワインが補充されるソレラシステムのおかげで、「酸化」ではなく「酸化熟成」と言えるレベルで収まるのが、このシステムの素晴らしい所です。

味わいにも顕著な酸化の特徴で、ちょっとひねたような香りが出てきます(僕苦手です)し、酸素に触れあっているので時間が経過した物ほど色合いも茶色身を帯びてきます。

産膜酵母と違って、寿命に限りがないので最大30年ぐらいのソレラシステム熟成が可能ですし、瓶詰め後も新鮮さが売りではないので、長持ちします!

さらに、熟成期間が長い物に関しては、水分蒸発もしていくので、アルコール度数が上がり、22%ぐらいに達することもありるそうですよ。

最後、見た目の特徴としてはオロロソは茶色です。

ペドロ・ヒメネスの作り方

3つ目のタイプはペドロヒメネスです。こちらは甘口シェリーなので、ワイン造りの段階からちょっと違います。

甘口を作る為に、糖度がやたら高いブドウが欲しいのですが、それに天日干ししたブドウを使うのです。ペドロ・ヒメネスはそのままブドウの品種名ですが、果皮が薄い品種なので、天日干しに向いています。早い話がレーズン作る感じです。

めちゃくちゃ甘くて、最大で残糖分が500g/Lに達する物があるそうです。えっ?1リットル中の500g・・・それって半分砂糖じゃん!!

そもそも甘すぎて全部発酵させようと思ってもしないので、部分的に発酵させて、混ぜてから酒精強化してアルコール17%にする。その後ソレラシステムで熟成させるスタイルで作っていきます。

糖分が多いと、メイラード反応による褐変、つまり茶色くなる要素が大きいので、色合いが相当濃くなります。黒に近い茶色ぐらいまで濃くなっている事がペドロ・ヒメネスにはあります。

味わいは当然甘いわけですが、香りにドライフルーツ(まぁ原料レーズンでからね)、コーヒー、天草などの香りがあるのが特徴です。甘いから酸化しててもオロロソと違って飲めちゃいます!

まとめ

主な3つでもペドロ・ヒメネスは明らかに違うスタイルですが、フィノとオロロソを押さえておけば、他の細かいスタイルも理解できるようになります。

と言うのも、ほとんどがそれぞれの途中で分岐するからです。まず3つ抑えて、そこからシェリーを理解すればきっと、世界が開けていけると思いますよ。