ワインを勉強していくと、そのうちに聞くようになる言葉が「クローン」です。
クローンって言葉だけ聞くとイメージは「同じ遺伝子を持つ物」と言う事は知ってて、このトップの絵みたいに「羊のドリー」のクローンみたいなのを想像しちゃいますよね。
でもブドウのクローンもそんな風に遺伝子操作して同じブドウが出来る「種」作ってるんじゃないか?なんてイメージで最初はイメージしちゃうと思うんですけど、ブドウって種から育てないんですよね。
その辺りとクローンのについてわかりやすいように解説していきます。
ブドウのクローンとは?品種と違うの??
ブドウ品種とブドウのクローンは意味合いが違います!
例えば「シャルドネ」「カベルネ・ソーヴィニヨン」「ピノ・ノワール」なんて言うよく聞く部分は当然ブドウ品種です。シャルドネは白ワイン用だし、カベルネなら濃いワイン作りそう、ピノ・ノワールならエレガントかな?なんて予想も立てられます。
そこに来て「このクローンは・・・うんぬん、かんぬん」なんて話を聞くことになるわけですが、クローンって同じ品種と何が違うの?って思いますよね。結論から言えば
クローンは同じブドウ品種の中で遺伝子が一致する物
になります。
このままでは「羊」とほとんど同じ事言ってる感じですが、ブドウの場合はその繁殖方法がちょっと普通の植物とは違うので話がややこしいいのですよね。
まずクローン知るためにはブドウの繁殖方法を学びましょう!
ブドウ樹の繁殖方法
ブドウの樹はなんと「種」から育てる事がほどんどありません!
これはブドウが物凄く遺伝的に不安定なので、種で植えると違う味のブドウが出来ちゃう事が多い事が「種」を植えない最大の理由です。
つまり「ピノ・ノワール」の中から取った種植えたら、極端な話「白ブドウ」が出てきちゃったりします。これでは農家は「あれ?白ワイン作らないんですけど・・・」と困ってしまいますよね。
それに同じピノ・ノワールに見えても「味が違う」なんて事もざらにおきます。ですから農家的にはもっと安定した「苗」。必ず希望に沿った味わいの「ピノ・ノワール」をつける「苗」でブドウ栽培をしたいので、そういう苗を苗業者に頼むわけです。
苗業者は文字通り「苗」を作る会社なので、指定された苗を納品するわけですが、さっき言ったように種植えたら安定した苗なんて作れないんですよ。
そこでブドウの樹の異様に高い生命力を利用した方法で苗を作ります。
そう!よく聞く接ぎ木ですね。この接ぎ木のイメージも思ってるのときっと違います!
きっと思ってる接ぎ木は地面から生えてる木があって、そこに「接ぎ木」するイメージじゃないですかね?・・・これ不正解ではないんですが、100%正解でもないんですよ。
そう言う「イメージ通りの接ぎ木」もありますが、新しく植える畑とか植え替える畑に使う、1から作り上げる苗木は違います!!
枝と枝をただくっつける
極端な話、本当にこれだけなんですよ。裸の枝同士をくっつけるだけ。
イメージを図にすると
接ぎ木のイメージ図
まずはこんな感じで樹があるじゃないですか。それをですね、
この上の丸で囲った枝の部分をチョッキと切った物を作って、んで赤の台木部分もこの方法で別から持ってきて
合体!!
ってつなげるわけです。それを
こうやって土に植えると、春に新しい枝を出すので
こんな風にブドウ畑になっていくんですよ。
んでもって苗木業者なんかはそれを生業としているので、こんな動画みたいに生産してるわけです。
うーん、もはや工場な感じが伝わってきますよね。そんでもって、このただの「棒」から植えたらブドウの樹が出来るなんてちょっと信じられないですよね。
同じ樹の枝を増やすのがクローン
さて、接ぎ木の方法がわかると、クローンの増やし方が見えてきましたよね?
「1本の樹」からは当然沢山の「枝」が取れます。そして同じ樹から取った枝は同じ遺伝子を持つ枝なんです。同じ遺伝子を持つクローンってわけです。
この方法では例えば1本の樹から20本の枝が取れると、20本の樹が取れて、翌年には20本から20本取れて400本の同じ遺伝子を持つ枝が確保できるわけです。
同じ遺伝子を持つ枝は同じようなブドウを樹に付けます。
ピノ・ノワールでも遺伝子が違う枝の種類があって、
・枝A 沢山実をつける
・枝B 実は少ないけど糖度が上がる
・枝C に病気に強い
この例でいえば「枝A」は大量生産ワインを造るのに適しています。「枝B」は収量は少なくても高品質なワインの生産に向いていますし、「枝C」は病気が問題になりやすい地域で力を発揮します。
こうやってクローンをその地域や目的に応じて選ぶのがクローン選定です。
実際には味も微妙に変わってくるので「目指すワインが何か?」に応じて植えるクローンを選ぶのが一般的です。
最もわかり易い例はブルゴーニュのマコン地区だと思います。伝統的にシャルドネのなかでも「シャルドネ・ミュスカ」と言うクローンが多く植えられていた地域で、このクローンだと味わいに「トロピカルフルーツ」みたいな南国的要素が出やすいんです。
ですから、マコンのワインは「南国のフルーツ」の味わいがある。それがテロワールだ!!
みたいなイメージが持たれているんですが、最近の若い生産者は植え替える時の、別のクローンを植える事が多いので、「南国のフルーツの味わい」がしない物がマコンでも増えています。
考えてみれば、マコンってブルゴーニュでは南ですが、リオンより北ですからね。割と涼しいModerate Climateに属するコート・ロティよりも北ですからね。南国のフルーツを呈するようになるWarm Climate程の温度はありません。
ですから、最近売れている生産者のマコンは結構コート・ドール寄りのミネラルと樽の調和がとれた王道的な物が増えてきています。
南国の味はテロワールじゃなくて、クローンだったんですよ!!
クローンには名前がある
クローンを選ぶときにはその特性を考えて、植えるものを選ぶわけですが、選ぶ上でちゃんとクローン毎に名前が付いています。
ピノ・ノワールで有名なクローンと言えば
Dijon Clone 777
これがかの有名な「ロマネコンティ」の畑に植えられているピノ・ノワールのクローンです。そして世界中の高品質なピノ・ノワールにもかなり使用されています。
小粒で収量は少ないけど、凝縮した高品質なブドウが付くクローンです。
その他にも大量にクローンはあって、たいてい番号が振られています。頭についている「Dijon」なんかはそれを認定した、もしくは発見した大学とかの名前です。
Dijon Clone 777 = DIjon大学が認定したクローンナンバー「777」
と読めばいいですね。
他にもDijon clone 115, 667などDijonだけでもいくつもありますし、UCD5なんてアメリカでよく見るのもあります。ちなみに
USD5 = USデイヴィス大学が認定したクローンナンバー「5」
の意味ですね。
とにかく大量にあって、気になる人はこのリンクでも見てください。下の方にいっぱい書いてあります。(英語ですけど)
クローン選定の必要性
前にも説明していますが、クローンを選ぶことは、どんなワインを造るかにおいて実は非常に大きな意味を持ちます。
どうしても品種が「ピノ・ノワール」なのか「カベルネ・ソーヴィニヨン」なのかが気になると思いますが、同じ品種でも味が違うのでもっと注目されていいと思うのですが、専門家の中でしか今のところは注目されてません。
旧世界の生産者も意外と注力していないので、ホームページ見てもクローンナンバーなんて書いて無い事がほとんどですが、新世界の生産者で高品質な物を作ってる生産者はかなりの確率で、ホームページにクローンナンバーを記載してますよ!
最近の先端分野では樹の上の部分だけではなくて、台木がどのクローンなのか?なんてところまで研究が進んでいます!台木にも「樹勢が強い」「病気に強い」とかいろいろあるんです。そこまで行くと超上級クラスなので、解説はしませんが台木にもクローンがある事は頭の片隅にでも置いてください。